週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

凄い!地層が 一目でわかる 等々力渓谷

 東急大井町線の 等々力(とどろき) 駅で下車する。静かな駅前商店街の要所に「等々力渓谷入口」の案内がある。案内に従って3分も歩けば、もう渓谷である。川を見下ろしてゴルフ橋がある(かつて野毛大塚古墳付近にあったゴルフ場へ行く橋だった)。その橋のたもとの螺旋階段を降ると、渓谷とせせらぎの世界に入る。

 世田谷区等々力1丁目。23区内で、電車の駅から5分も歩かずに深山幽谷の気分というところは滅多にない。

 トドロキの地名は、轟、驚などとも書かれ、ドウメキなどとともに、水音に関係する地名として、柳田国男をはじめ多くの研究者が指摘している。滝や渓谷の水音がぴったりの土地なのである。

 『世田谷の地名』の著者、三田義春はこの谷筋には地名を生んだ大滝があり、それが轟々と水音を上げていたと推定している。激流は渓谷を削り、滝は年月とともに小型化したというのである。

 ゴルフ橋から 谷沢川 ( やざわがわ の渓谷に沿って歩くと、切り立った崖から二条の清水が流れ落ちている。不動の滝である。近くに東京都指定名勝の説明板がある。

 <等々力渓谷は 国分寺崖線(こくぶんじがいせん) (ハケ)の最南端に位置する約1kmの都区内唯一の渓谷である。谷沢川が国分寺崖線に切れこんで浸食したもので、台地と谷との標高差は約10mである。(中略)等々力不動の滝右手の露頭では武蔵野台地の基盤を形成する地層を観察することが出来る。地層は上から黒土層、立川ローム層、武蔵野ローム層、武蔵野礫層、東京層の順で、武蔵野ローム層の中には東京軽石層が白くベルト状に認められる>

 両親と一緒の小学生が崖を指さしながら、地層をメモする姿をよく見かける。滝の横手にある階段を登ると、江戸末期建立の等々力不動の不動堂である。

(掲載号:12月18日号)