週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

望楼のある広尾小学校 文化財指定

 山の手といわれる渋谷区は武蔵野台地の南端にあたる。北部の笹塚付近は海抜四五メートルほどで、渋谷川沿いの谷を挟んで、また東渋谷台地が小高くせり上がっている。

 東渋谷でも、恵比寿三丁目の海抜三〇メートルを最高に広尾付近が高台になっていて、由緒のある神社・仏閣や大名の下屋敷が置かれた理由がわかる。面白いのは、この広尾の高台に望楼つきの鉄筋コンクリート造(RC造)三階建て小学校が聳えていることだ。

 それが渋谷区立広尾小学校(渋谷区東三の三の三)である。小学校のあるところが海抜二九・五メートルで、このあたりの最高地点になる。そこにRC造三階建て(高さ一〇・九メートル)の校舎が建てられ、さらにその屋上に頑丈なRC造の望楼(高さ一二・三メートル)が伸びあがっている。つまり地上から見て高さ二三メートルの望楼が設置されたのである。

 広尾小学校は、大正五年設立という古い歴史を持っているが、昭和三年に火災のため全焼した。当時は関東大震災の直後で、小学校復興事業が進められており、耐震・不燃建築に努力が続けられていた。再建もその方向で検討されたに違いないが、地元の希望もあって小学校と消防署を併設することになったらしい。建設地もすこし移動して付近の最高地点である現在地になったという。

 だから、昭和七年落成当時の写真には、小学校の正門と並んでポンプ車二台を配備した消防署(現在は学校の倉庫に転用)が写っている。玄関廻りのデザインなどにも当時流行の個性的な表現主義スタイルが見られ、のちの装飾性を排除する建築様式への移行期の特徴がよく出ている。

 その後消防署は移転し、望楼は使われなくなったが、この校舎は戦災を免れ、平成十二年、国の登録有形文化財に指定された。

(掲載号:01月25日号)