週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

星製薬 薬科大学 薬用植物園

 戯作者の柳亭種彦が眠っている浄土寺墓地前の通りからは、星薬科大学の高い塀が見える。その正面は塀に沿って東南に進むと突き当たる旧中原街道にあり、大学の所在地は荏原二丁目にある。

 同大学は、明治から昭和にかけて製薬業で活躍した星一(一八七三〜一九五一)が昭和十六年に設立した星薬学専門学校が前身で、同二十五年大学となった。
星一は福島県の出身、二十一歳のとき渡米して働きながらコロンビア大学に学んだ。帰国後の明治四十四年、現在の西五反田に星製薬を設立した。医薬品の国産化に努め、キナやコカなどの薬用植物を台湾や南米のペルーで栽培しモルヒネ、キニーネなどの医薬品を初めて国産化した。

 今の東京卸売センターの敷地に建っていた同製薬の工場は鉄筋四階建て、従業員数三千人という大規模なもので、戦前の東京名物の一つだった。

 丸屋根の大学の本館は、星が留学したコロンビア大学の講堂をモデルに大正十三年に建設された。内部には階段がなく、らせん状の廊下で上り下りするようになっている。また、飛鳥時代に行われたという宮中薬草狩りをモチーフとした大壁画もある。

 本館向かって右手には専門学校開校と同時に設けられた薬用植物園があって、一般に無料で開放されている。約二千九百平方メートルの園内は樹木園、水生植物園、標本園、野草園、温室などに分かれ、薬用を中心とする六百五十種の有用植物園が栽培され、種類毎に薬効や成分などがラベルに記されている。

 外来者は正門脇の警備室に申し出、園内の見学者用ノートに記名する。記帳台には観察用ルーペが備えてあり誰でも利用できる。時間は午前九時〜午後四時半(土曜午後零時半)。日曜、祭日、大学の休暇期間は休園。

(掲載号:07月26日号)