週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

ターミナル 「極端駅」から「終着駅」まで

 イタリア映画の『終着駅』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、53年製作)。ローマのテルミニ駅が舞台で、路線が行き止まりになっている頭端式のホームが並んでいた。ヨーロッパの主要駅ではお馴染みの風景で、英語のターミナルも語源は「終点」という意味のラテン語である。

 東京では上野駅が代表例で、東北や上信越から到着する列車が頭を揃えて並び、石川啄木が絶唱を残している。
  ふるさとの訛なつかし
  停車場の人ごみの中に
  そを聴きにゆく

 鉄道発祥の地であるヨーロッパでは、終着駅は発車駅でもある。逆方向に列車を動かすために機関車を付け換えねばならない。交通量が急増してくると、この作業が大きな負担になる。

 明治の鉄道草創期のリーダーだった鉄道頭、井上勝は西欧追随方式を取らなかった。横浜−新橋間の開通に続く神戸−大阪間の着工にあたり、井上は大阪駅を通過式のホームとし、そのまま京都に向かえる設計にした。これがその後の国有鉄道に大きな影響を与え、わが国の中央駅である東京駅も通過式を採用した。

 大正三年に完成した東京駅は辰野金吾の設計である。その辰野が『中央停車場の建築』と題する文章で、これを「各地方鉄道の集合点で、一の大なる極端駅(Terminal Station)」と紹介しているのが興味深い。

 昭和十年にできた新村出編『辭苑』(『広辞苑』の前身)には、カタカナ語のターミナルが採録され、「鉄道の終点。終点駅」の説明がある。昭和初年にようやく日常語の仲間入りをしたらしい。

 一方、私鉄のターミナルには頭端式ホームが多い。鉄道の電化が進んで、もはや機関車の入れ換えの必要はなくなったにである。

(掲載号:09月20日号)