週刊誌コラム
週刊新潮「タワークレーン」
助け合い 呼びかける モヤイ像
渋谷駅の周辺はハチ公広場(北口)だけでなく、東口や南口も人並みでごった返している。都内の盛り場のなかでは若い世代が目立つところで、若者のファッションの発信地とも言われている。
南口のバス・ターミナル前のモヤイ像周辺もハチ公広場に次ぐ待ち合わせの場所で、日が暮れると若者のバンドやタレント予備軍の即興劇の舞台になっている。モアイ像というのは高さ2メートル余りの巨大な人面像で、伊豆7島に属する新島から贈られた。
傍らの説明板に曰く、
<新島には古くから「モアイ」と呼ぶ美しい習慣があった。それは島民が力を合わせる時にのみ使われた。いわば共同の意識から生まれた素朴な人々の心根を表すものであった>
巨大な石像は南太平洋イースター島のモアイ像を連想させる。しかし、こちらのモアイ像は人面だけの像である。あのモアイ像はイースター島特産の凝灰岩で作られているが、こちらは新島特産の抗火石を材料にしている。抗火石は軽量で耐火性に富んだ石材である。
とはいうものの、モアイ像をヒントに新島で昭和50年ころから特産の抗火石を生かす試みとして制作し始めたものだから、似ているのも不思議ではない。
「もやい」を『広辞苑』で引くと、「舫い」(船と船をつなぎ合せること)と「催合」(二人以上の者が一緒に仕事をすること)とある。新島村には今でもこの言葉が生きているという。
モヤイ像は両面に顔を持ち、片側はアンキ(若者)で片方はインジ(老人)と呼ばれている。世代の違いを超えた両面像とうのが面白い。
新島には渋谷区立青少年センターなどの施設があって渋谷とのつながりも強いので、昭和55年9月、新島村から贈られた。
(掲載号:12月06日号)
