週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

重要文化財 世田谷 代官屋敷

 東急田園都市線の三軒茶屋駅の周辺は再開発事業が進んで、昔ながらの雰囲気を残す一方、お洒落で活気のある町並になっている。その核になっているのが平成8年暮れにオープンした26階建てのキャロットタワーである。

 東急世田谷線の三軒茶屋駅もこのビル内に設けられたので、明るい地下道を通って雨風の心配なく乗り換えができるようになった。世田谷線は三軒茶屋−下高井戸間の全長5.1キロを結ぶ路面電車である。三軒茶屋と下高井戸駅には改札口があるが、途中駅はいずれも無人駅で、バスの停留所と同じように車内で運賃を払う。

 玉電の愛称で親しまれた玉川電車の支線で、大正14年に開業している。玉電が昭和44年に姿を消したあとも世田谷線は生き残り、都内では都電荒川線と並んで庶民的なローカル線の双璧を成している。運賃は全線均一の130円。2両連結のかわいい電車が落ち着いた住宅街をのどかに走り抜ける。

 途中駅の上町で電車を下りて南に歩く。すぐ世田谷通りだが、これを渡ってそのまま進むとボロ市通りに出る。古風な幟がはためくボロ市通り商店街を東に行くと間もなく割竹の塀に芽茸で黒塗りという荘重な屋敷門が目を引く。

 門前に「重要文化財 大場家住宅」と題した説明がある。<この住宅は、大場家7代六兵衛盛政が元文2年(1737)と宝暦3年(1753)の2度にわたる工事によって完成したものであります。大場家は元文4年から幕末まで彦根藩世田谷領の代官職を世襲したので、その役宅として使用されていました。>

 江戸中期上層民家の貴重な遺構として主屋と表門が昭和53年に国の重文に指定された。毎年暮れと正月の2度ボロ市が開かれるのが、この通りである。

(掲載号:12月27日号)