週刊誌コラム

週刊文春「立ち話」

礎を築いた達人たち

 (いしずえ)とは、建物や橋などの土台に据えた石のことである。寺院や城郭などの礎石(そせき)は、建造物の歴史を知る物証ともなる。

 転じて、ものごとの(もとい)となること、もの、人を表すことも多い。

 本コラムで紹介してきた人物も、日本の礎を築いた達人たちであり、先駆者である。

 歴史はどこから眺めるかによって随分と景色が変わって見える。

 大地に残された先人の履歴は生きた教科書である。災害や地域の問題に真っ向から立ち向かった人々の、何とダイナミックで劇的であることか。そして、彼らがなぜ社会のインフラづくりに関わらねばならなかったのかを紐解くと、土木や建築の本質さえ垣間見ることができるだろう。たとえば、寺の中で読経していた僧侶たちは、なぜ庇護された寺を出て自らを犠牲にしてまで民衆のために土木の仕事を行ったのか。戦ばかりしていたと思われた戦国武将たちはなぜ、多くの費用や労力をかけて領地の問題を解決しようとしたのか。江戸から明治への転換期、近代化の道先案内人となって尽くした外国の人たちが播いた科学の種は各分野で花開いた。古代から近代の、そうした達人たちの業績、生き様が現在、そして明日のための道筋を教えてくれることも多い。

 なぜなら、土木事業や建築という国土形成の礎が、私たちの暮らしを整え、文化や経済といった上部構造を支えてきたからである。そして、その道は今も、明日も続く。

 本コラムは、その代表的な人物七十二人、それ以前は大成建設の作業所の中の地道なドラマを紹介してきたが、今回一三○六話をもって一旦筆を置き、読者各位に感謝の意を表したい。

(掲載号:06月04日号)