週刊誌コラム
週刊文春「立ち話」
群馬県伊勢崎市にて洋館の引越しショー
去年の十一月十六、十七日の二日間にわたり群馬県伊勢崎市にて前代未聞のイベントが行われた。
それは明治四十五年に建設され、県内最古の木造洋風医院建築として市の重要文化財に指定されている「黒羽根内科医院旧館」を、解体しないで建物ごと移転するという"引越しショー"である。
引越しは市内本町のそれまで建っていた場所から本町通りを横切り、北に約百メートル先の新天地へと「曳き家」という方法で行われ、多くの市民と報道陣が見守るなか、建物は二日がかりで無事に移転された。
曳き家という方法は、建物を一メートルほど持ち上げて鋼鉄の台に土台ごとのせ、台の下に車輪を取り付け、道路に敷いたレール上をゆっくり動かすというものだ。熟練した職人たちの曳き家工法の様子を見学できるというのも珍しい。
市の委託を受け、旧館の建物調査や移転、その後の活用計画づくりにあたっているのがNPO「街・建築・文化再生集団(RAC)」であり、技術協力をしたのが大成建設だ。RACの中村武氏と後藤治氏(工学院大学助教授)に話をうかがった。
「古い建物を保存、移動するためには、建物を解体して再度組み直す方法と、建物ごとひっぱるという曳き家工法があります。いろいろと検討した結果、コスト的にも曳き家が最良だということになりました。ただ、この場合、通行止めや架線の問題など、行政や市民の協力なしではできません。移転について、市民参加のシンポジウムを何度か開いているうちに、市民のみなさんが関心を持ってくださったのです」
やがてこの引越しを、街の活性化につなげる大きなイベントにしよう、と市民の間で盛り上がっていったのだという。
(掲載号:01月16日号)
