週刊誌コラム
週刊文春「立ち話」
あらゆる世帯が混在する三次元の「優しい街」
大阪と神戸とのほぼ中間に位置する西宮市。その北の玄関口となる阪急・西宮北口駅に降り立ったのは、二十世紀が終わろうとする十二月下旬のことだった。
駅のすぐ脇に、二〇〇一年四月のグランドオープンを控えた二つのビルが聳えていた。住宅と公共公益施設、商業施設からなる三次元の"新しい街"だ。
東棟には地元住民が日常生活に利用する食品や衣料品などを扱う店、西棟には広い地域からの集客を狙った都市型店舗が入り、東西の相乗効果で付加価値を生み出す構成となっている。
何より興味を引かれたのは、三百以上ある住宅スペースのデザインだった。
1DKから4LDKの基本的な住戸タイプはもちろんのこと、二世帯向き、単身者向き、DINKS向き……果ては「離れのある戸建て感覚のタイプ」など、さまざまなライフスタイルの世帯が渾然一体となるよう設計されていた。
「こちらのように、同じ階にいろんな家族形態の世帯が住める複雑なデザインというのは、震災後の再建住宅では珍しくありません」と西棟の建設を担当した大成建設の堀田秀明統括所長が説明してくれた。
その言葉を聞いて、二十年前、毎日のように訪れていたこの界隈の様子を思い出した。高校の通学路にある西宮北口駅周辺は"我が青春の街"だった。特に、古くからの小さな住居兼商店が軒を連ねてひしめき合っていたこの一角には、幼な子から老人まで、あらゆる世代の人々が仲良く、賑やかに暮らしていた。そのせいかいつも温かく、どこか懐かしい空気が漂っており、お気に入りの場所だった。
あの界隈は震災で壊滅的な被害を受け、消えた。だが、二十一世紀には、また新たな形で、さまざまな世代を交えた優しい暮らしが復興し、育まれてゆくのだろう。
(掲載号:02月22日号)
