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週刊誌コラム

週刊文春「立ち話」

「あだ名」でわかるスタッフからの信頼

 大成建設の近藤文夫作業所長は、「トンネルを上向きに掘り上げてゆく」という驚くべき最新工法を世界で初めて、大阪市阿倍野区の現場で実現させた。

「これは非常に発展性のある工事だと確信しました。今後もぜひ二例、三例とつなげていってほしい」と語る所長が大成建設に入社したのは、一九七三年のことだった。

 その後、関西空港の前島の護岸や高速道路、泉佐野市や阪南市の下水地下トンネル、和歌山市の新堀ポンプ場や奈良県吉野の人知高架橋など、多様な種類の工事のキャリアを積んできた。

 そんな所長が最も印象的だった現場は、入社七年目の一九八〇年に赴任した北海道電力の知内発電所だったという。

「海底トンネルの建設だったんですが、何もかもが初めての体験で、すごく苦労したのを覚えています」

 技術的に解決困難な課題が山積していたこの当時の経験を教訓として、貴重なプライベートの時間を割いて勉強を始め、一九八三年、技術系の中でも最も難しいとされる「技術士(建設部門)」の国家資格をみごと取得した。

「今回の上向きシールド工法を使えば、あの海底トンネルのようにタフな工事もさらに安全で効率的に進められるようになりますよ」

 では、今回のタフな工事を成功させた所長は、現場スタッフをどのようにリードしたのだろう?

「みんなを信じて、あまり手綱を引き締めない方ですね。だから、それぞれの責任で、自由に情熱を持って仕事をしてくれるのかもしれません」

 確かに現場の空気からも信頼の厚さは感じられる。その証拠に「あだ名は?」と訊ねると「私のいないところでは、パパ、パパと言っているらしいです」と照れ臭そうに答えてくれた。

(掲載号:06月21日号)