週刊誌コラム
週刊文春「立ち話」
目に見えない難工事
鳥取県の大山隠岐国立公園内にある船上山の中腹では現在、船上山ダムの建設が順調に進められている。 このダムは、赤碕町の農業用水として利用される勝田川の水量確保が目的だが、工事は容易なものではなかった。
「ここは旧大山の火山砕物が堆積してできた地盤なので強度が大きくなく、しかも透水性は高いのに基礎処理しにくい岩盤だったんです」と大成建設の小林聰所長は説明する。
もし基礎地盤中の地下水がダムの脇や底の地中に浸透し流出すれば、ダムに水が貯まらないばかりか、ダム自体が浸食されかねない。「ですから着工から四年は基礎処理に専念しました」
基礎処理とは、地中に穴を開け、そこにセメントミルクを注入(グラウチング)して水が浸透しにくい地盤に改良する工事で、施工工程の全てを直接見ることが出来ず、様々な工夫を要した。
ダム全体で五千本もの穴を削孔し、総延長は八万五千にも及ぶ。とりわけ、高さ約四四m、堤長二三二mに土石材料を積み上げた堤体の下には、四五mもの深さのカーテングラウチング、五二〇mの補助グラウチング等、改良目標達成までにかなりの施工を必要とした。
「つまり、地上のダムの堤高とほぼ同じ深さまで地盤を改良して、遮水をする部分を造っているんですよ」
しかも、地盤の岩相の変化が大きいため、セメントミルクを注入する際の速さや圧力の管理をきめ細かく行なう必要があり、最盛期には四十台のコンピュータを導入して中央管理室で厳しく監視された。
「効果的な基礎処理をする為に多様な方法を試みました。これらの経験が今後のダム建設に貢献してくれれば、と思っています」
その言葉には、困難を克服した者だけが持つ揺るぎない自信が感じられた。
(掲載号:07月05日号)
