週刊誌コラム
週刊文春「立ち話」
市民の手で育てた苗木で「ふるさとの緑」を再生
六月二十四日快晴。徳島県鳴門市大麻町の「ドイツ館」の駐車場では、小さな苗木が配られていた。日本道路公団(JH)徳島工事事務所の取り組み「グリーンセイヴァー」の一幕だ。
四国横断自動車道・鳴門IC〜坂野IC間の道路を建設する際に切り開かれた「のり面」は、元々生えていた樹々によって森が再生される。その苗木を来年春の植林時期まで地域住民に育ててもらおう、という試みなのだ。
「ただ単純に緑化するのではなく、下方はクスノキやセンダン、中間はアセビやヤマザクラ、上方はアカマツやヤマハゼと樹々の棲み分けにも考慮しています」と大成建設の山本徹作業所長はいう。このイベントの一環として夏休みあけには、近隣の学校も含め約三千株の苗木が配られる。
山本所長は一九七六年に大成建設入社。中国自動車道や山陽自動車道、館山自動車道、京葉道路、第二東名など、一貫して道路建設に携わってきた。その経験豊富な所長から見ても、この現場の、自然環境との調和に対する意識の高さは特別だという。
「近くには四国八十八カ所霊場の第一番札所や大麻比古神社もあり、注目度が高く、周囲の期待も大きい。道路公団との協力がなければ、これほどの成果は得られなかったでしょうね」
植樹に使う苗木の種は、工事前の森で拾い集めた。
「私自身も去年の秋、道路公団徳島工事事務所の浅野利一所長と一緒に森に入って、二百個ほどのドングリを拾いましたよ」と山本所長は笑顔でふりかえる。
地元のドングリを発芽させ、苗木を地元の人たちに育ててもらい、ふるさとの豊かな緑を再生する……。
手間と時間のかかる作業だからこそ、心のこもった正真正銘の「故郷の風景」を守ってゆけるのだろう。
(掲載号:08月30日号)
