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週刊誌コラム

週刊文春「立ち話」

現在の技術を駆使して文化遺産を蘇らせる

 東京都豊島区のJR池袋駅近くにある自由学園明日館は、米国の高名な建築家フランク・ロイド・ライトの代表作の一つであり、国の重要文化財にも指定されている。

 現在、この世界的に貴重な歴史的遺産の保存修理工事が行われている。

「解体調査工事だけで約一年かけ、組立工事にも様々な新しい工夫が施されています。保存修理工事とは言え、耐震構造など、建てられた一九二六年当時よりも厳しくなっている現在の建築基準をクリアしなければいけませんから」と大成建設の齋藤榮所長が語るように、今回の工事は「保存と改善」をいかにすり合わせるかがポイントだった。

 例えば、明日館の各建物の内部からはできる限り柱が排除され、そうやって空間を連続させることで全体が一体構造となり、独特の美しさを醸し出している。これは、現在の"2ラ4(ツー・バイ・フォー)構法"の先駆けとも言えるライトの設計の特徴の一つだ。

 ところが、元のままでは現在の耐震基準を満たせない。

 そこで、屋根など、外からは見えない部分に鋼材を入れて補強し、構造物のデザインや空間の美しさはそのままに、建物全体の強度を上げる方法を取った。地面より下に位置していたことから、湿気などで腐朽していた土台や床の組材の問題は、元の煉瓦基礎の上に新たにコンクリート基礎を打つという方法で解決した。しかも建築物全体の位置は変わっていない。

「工事が順調に進められたのは、持主の自由学園と、監督側の文化財建造物保存技術協会の理解と協力があったからです」と齋藤所長は言う。実際、現場の事務所では、文化財建造物保存技術協会と大成建設のスタッフが机を並べていた。

「深い信頼関係が、いいものを作るんです」と所長は笑みをこぼした。

(掲載号:09月13日号)