週刊誌コラム
週刊文春「立ち話」
仕事で培った蓄積が文化を次世代へと伝える
世界的に高名な建築家フランク・ロイド・ライトの作品で、国の重要文化財である自由学園明日館。その保存修理工事を任された大成建設の齋藤榮所長は、まさしく"伝統建築物に関するオーソリティ"だ。
「この種の仕事の成功は、いかに優秀な職人を集められるかにかかっています」という齋藤所長の広い人脈は、仕事の中で自然と蓄積されてきたものだという。
「幼い時から日曜大工が好きで、棚を作ったり物置を改造したり、水道や下水までいじりました。小学校の高学年の時にはもう『将来は大工さんになりたい!』と思っていましたよ」と語る齋藤所長は一九六五年に大成建設に入社した。
名古屋の名鉄丸栄百貨店や新潟の三井ビルなど数々の建築物を手掛けたが、一九九四年、東京で瑞蓮院の新築工事を担当したのが大きな転機となった。以来、 井草八幡宮や世田谷区指定文化財の旧安藤家、東光寺など、十数件もの神社仏閣 の新築・改修・移築・建替工事に携わってきた。
「伝統建築や文化財に関する工事には、特殊な知識や技術、そして何より、経験 豊富な腕のいい職人が必要となります。これからは、仕事を通して蓄えてきた私の知識や人脈などを若いスタッフに伝えることで、これまで以上に大成建設が文化遺産、つまり木造の伝統建築の保存に役立てるようになるのが望みですね」と齋藤所長はいう。
「いまの自由学園明日館の現場にも、最高の職人がそろっています。自分の時間を割いてでも、丁寧に細かい継手仕口)(木材の合わせ目)を作る。仕事に対するこだわりが強いんです。この仕事は地図だけでなく、歴史にも残る仕事ですから、そういった昔気質のこだわりが大切なんです」と齋藤所長は満足そうに目を細めた。
(掲載号:09月20日号)
