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週刊誌コラム

週刊文春「立ち話」

皆で力を合わせて「カッコいい橋」をつくる

 コンクリートのアーチ橋としては日本一、鋼材の橋桁を持つ複合アーチ橋としては世界一の大きさとなる「富士川橋」の建設には、日本初の工法が採用されている。

 この現場を取り仕切る貞光誠人所長は一九七三年に大成建設に入社して以来、静岡県の東名足柄橋や愛媛県の天子川橋など、数々の現場経験を積み、本社で橋梁の設計室長も務めた"橋のスペシャリスト"だ。

 貞光所長が「橋」を意識したのは小学生の頃だった。
「北九州市の若戸大橋を見た時に『キレイだなぁ』って感激したんです。橋ってカッコいいでしょ? それに土木の仕事の魅力は、例えば『あの橋はオレが造ったんだ』という人が一杯いることです。発注者も設計者も現場のスタッフも誰も特別扱いされないから全員が想いをこめやすい。だからこそ、完成したら二度と人の目に触れない土台の壁に、自分の名前を書いたりするのかもしれないですね」

 この現場には見学者が多い。日本初の規模だけに技術者はもちろん、一般の人や地元の小学生も訪れる。現場の脇に仮設された工事用のつり橋の名前は小学生に公募され、二百余もが集まりその中から「ゆらり橋」が選ばれた。見学にくると、このゆらり橋を楽しそうに渡るという。

 取材が終わってから、貞光所長が奥の部屋から郵便で届いた大きな封筒をもって来た。中には手書きのイラストと現場への応援メッセージが描かれた『うちわ』が……。嬉しい贈り物だ。所長の表情を見ているだけで思いが伝わってくる。

 両岸から建設してきたアーチが繋がる日を「結納の前日みたいな気持ち」で待ちわびる貞光所長。ご家族のことを尋ねると「あ、今日は妻の誕生日だ」。カッコいい橋を造る所長は、家でもやはりカッコいいようだ。

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(掲載号:10月11日号)