週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
旧曽木発電所 : 鹿児島県大口市
鹿児島県最北に位置する大口市は最近ブームとなっている焼酎発祥の地としても有名だが、滝幅210メートル、高さ12メートル、東洋のナイアガラと呼ばれる「曽木の滝」がある。今頃は、このしぶきをあげて流れ落ちる清流が水田を潤し、青々とした稲が風にそよぐ風景が見られるだろう。そしてもう一つ、曽木の滝から下流に1・5メートル。近年、この地域にあって全国的な注目を集めている近代化遺産がある。
幻の近代化遺産。レンガ造りのヨーロッパの古城を思わせるような建物が湖底から姿を現すのである。近代化遺産「旧曽木発電所」は、普段水面下に沈んでいるが、渇水期には姿を現してくる蕫幻の近代化遺産﨟として、この明治の発電所は全国的に有名になり、最近では見学に訪れる人も多いと言う。
明治42年に完成した発電所は、当時としては、日本屈指の発電量を持ち、近くの鉱山の動力用として使われたばかりではなく、水俣まで送電し、この地の化学工業の発展に貢献したと言われている。長年電気を送り続けた発電所も、昭和40年、鶴田ダムの完成によって人工の湖が出来、ダム湖の底に沈むことになった。そして長い間、明治の発電所は忘れられていた。しかし、近頃、近代化遺産について世の中の関心が高まるにつれ、幻の近代化遺産として脚光を浴びている。
現存する明治の発電所自体が少ないのだが、例え専門家でなくとも湖底から出現する煉瓦の建築は、興味深い遺産なのである。
(掲載号:2004年07月16日号)
