週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
堀川橋 : 宮崎県日南市
宮崎県日南市に油津という港町が在る。戦前はマグロの水揚げ港として、更に江戸時代には飫肥杉の積出港として賑わった。この町は、歴史の積み重ねの上に、落ち着いたたたずまいをかもし出している。
油津を全国的に有名にしたのは、映画「男はつらいよ」(第45作「寅次郎の青春」1992年)のロケ地となったからだろう。映画では町の中を運河が流れ、その運河に架かる立派な石のアーチ橋がメイン・シーンとして取り入れられていた。この堀川橋と運河周辺のかもし出す風景が、妙にノスタルジーを感じさせ、人々の心に残るのだろう。
堀川は江戸時代にこの地方特産の木材(飫肥杉)を油津の港に搬出するために掘られた運河だった。この運河の中流に架けられた石橋が堀川橋だ。九州一円に明治以前からあった石橋の伝統を受け継いだアーチ橋、明治36年に完成、建設に当たったのは、飫肥の有名な石工・石井文吉と言われている。
歴史を感じさせる町並みと運河、立派な石橋。そして、町中には、大正の赤レンガ建築「油津赤レンガ館」(大正10年)、外側に銅板をはった昭和初期の大店舗・杉村金物本店(昭和7年)などの歴史的建造物が残る。
飫肥の人達は歴史的な建物の保存に熱心だ。「赤レンガ館」は、市民の有志が金を出し合い合資会社を設立して買収、そっくり市に寄贈したのだ。油津の町並みは、訪れたものの目を楽しませてくれる。
(掲載号:2006年10月06日号)
