週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
白水溜池堰堤(白水ダム) : 大分県竹田市他
大根は冬の野菜で、雪の降らないところでは、今頃大根引きが行われ、軒先や納屋に何十本もの大根が干されるのである。熊本と大分の間を結ぶのが豊肥本線で、この路線の中間、熊本県と大分県の境辺りに豊後竹田駅がある。豊後竹田(竹田市)は、音楽家瀧廉太郎の生まれ故郷で、土井晩翠「荒城の月」に曲をつける時、この竹田市の城跡(岡城)を思い浮かべたという。盆地で周りを山に囲まれ、この山畑でも今の季節、大根の収穫と大根干しが行われているに違いない。
そんな、竹田の山の中に「白水ダム(重要文化財)」がある。この辺りは昔からたびたび水不足が起こり、水争いが絶えなかった。水不足解消のため昭和6年から7年の歳月をかけ昭和13年に完成した。設計したのは大分県農業土木技師小野安夫である。
おそらく、水の流れる姿の日本一美しいダムではないか。コンクリートの表面に石が張られたダムで、余った水はダムの上からわざと溢れるように設計されている。溢れた水の勢いが強いと長い年月の間にダムの本体を傷めてしまうので、水の勢いをそぐために緩やかな曲線を描く階段状になっていて、そこを水が流れ落ちていくのである。約幅80メートル、水は石の表面で空気を含み白く輝く。ダムを見上げると巨大な白い水のカーテンができているようだ。
白水ダムは豊後竹田駅からタクシーでおよそ30分の山の中、降りてから20分程度山道を歩いたところにある。たどり着くのは大変だが、水の流れる様子は一見に値する。
(掲載号:2002年12月06日号)
