週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
仁風閣 : 鳥取県鳥取市
晩秋に鳥取砂丘を訪れるのも良いかもしれない。砂丘の観光シーズンは5月から11月で、そろそろシーズンオフ。だが、かえって人が少なく、約550ヘクタールもの砂に覆われた空間、そして、風の強さや方向で生きもののように変わる風紋を体感できる。この砂丘の中心は国の天然記念物に指定されている。
砂丘見物と併せて市内旧鳥取城跡の一隅にある「仁風閣」を訪れてみてはいかがだろう。仁風閣とは、明治40年に建てられた山陰地方屈指の洋風建築である。この年、皇太子(後の大正天皇)の山陰行啓があり、旧藩主池田家は皇太子の宿泊所として洋風建築(後に東郷元帥により仁風閣と命名)を建てた。この行啓を機に山陰鉄道が鳥取まで開通し、電灯が始めてついたとのことだ。
赤坂離宮(現迎賓館)などを設計した明治の宮廷建築家、片山東熊が設計したと言われる。ルネサンス様式を基調とした木造2階建ての建物で、八角の尖塔を持つ。現在は、国の重要文化財となり、藩政の資料や明治・大正の民族資料が展示され、皇太子の御座所や控えの間などが復元されている。
山陰の冬の味覚、松葉蟹漁の最盛期は11月からだそうだ。天然記念物砂丘と、重要文化財の仁風閣、そして松葉蟹。晩秋の鳥取の旅は自然・近代化遺産、味覚が楽しめる。
境港市へ足をのばすと、山陰の空、地平線、砂丘を背景として被写体を撮った巨匠植田正治の写真美術館がある。趣をかえた砂丘の姿を見れるだろう。
(掲載号:2002年11月01日号)
