週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

若狭湾船屋 : 京都府与謝郡伊根町

 奈良の東大寺二月堂では、3月1日から14日間、修二会なる行事が行われる。中でも12日に行われる夜空を焦がし春を呼ぶ炎、「籠松明(かごたいまつ)」と13日の「お水取り」の行事は有名だ。

 さて、お水を取るのは二月堂の若狭井からで、この水ははるばる若狭の国、福井県小浜の神宮寺から送られてくる、と言うことになっている。

 小浜は若狭湾の中心地で、旧遊郭などの町並みが残る。若狭湾には幾つもの入り江があって、入り江の中は驚くほど波が静かだ。こんな波の静かな入り江に、かつて「船屋」といわれるこの地方独特の建築物が建てられていた。

 岸から水面に張り出した家、といえばよいのだろうか。一階が船を入れるガレージのようになっていて人は二階に住まうという形式である。また、船を入れるためだけの小屋が水面に張り出して建てられている場合もある。残念ながら、もう船屋は小浜の周辺にはほとんど残っておらず、船屋の集落が残るのは、若狭湾の西の端、京都府伊根町亀島などだけになってしまった。

 ところで、若狭湾と言えば有名なのが若狭 ( かれい 。ちょうど今ごろが鰈の旬ということである。干し鰈をあぶって、旨い日本酒を一杯。春の一夜を、のんびりと手酌で過ごすのもよいかも知れない。

(掲載号:2002年03月15日号)