週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
ヴォーリズ記念館 : 滋賀県近江八幡市
琵琶湖の東岸、近江商人の出身地として知られる近江八幡市は、歴史と伝統を感じさせる町だ。この町の一隅に、ごくさりげなく佇んでいる木造の建物。建築家ウイリアム・メリル・ヴォーリズが過ごした住宅が記念館として保存されている。
ヴォーリズは日本の近代建築、特に洋風住宅設計の上で大きな足跡を残した建築家だ。彼はキリスト教の伝道者として、慈善活動家として、また、事業家として、更に大きな足跡を残しているのである。例えば、家庭用の塗り薬として、誰もが名前を知っている「メンソレータム」の販売は、彼の手がけた事業の一つだ。
ヴォーリズは、明治38(1905)年、24歳で滋賀県立商業学校の英語教師として来日した。学校を辞めざるを得なくなり、自立のために建築設計を始めた。彼は正規の建築教育を受けたわけではなかったが、才能があったのだろう。彼の建築設計業務は順調に発展した。
彼の事務所が手がけた作品として、大阪の大丸百貨店、関西学院大学や神戸女学院など数多いが、中でも住宅建築は膨大な作品を残している。京都市内に今も佇む豪邸から、近江ミッションの住宅のような中規模住宅まで、その種類は実に多様だ。これほどの住宅設計を手がけていながら、ヴォーリズ記念館、つまり自身の家は実に簡素だ。見学は予約が必要。また3月30日まで、滋賀県立近代美術館で、ヴォーリズの展覧会を開催中。
(掲載号:2008年03月07日号)
