週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
六把野井水拱橋 : 三重県いなべ市
三重県桑名市から内陸部のいなべ市まで、約20・4キロを繋いでいる鉄道がある。三岐鉄道北勢線と呼ばれる私鉄で、新幹線のレール幅の凡そ半分、昔の軽便鉄道、この線路幅のまま運行している特殊狭軌鉄道だ。
なんでも、現在このような特殊狭軌の鉄道は、季節や期間限定で運行される観光鉄道を除いて、普通に走っているのはこの北勢線と路線の長さは随分短くなるが近くの四日市にある近鉄内部・八王子線だけだと言う。 北勢線は北勢軽便鉄道として、明治45年に認可、大正3年の西桑名・楚原開通以降順次路線を延長し、昭和6年には現在の終着駅阿下喜まで開通した。
六把野井水拱橋は、六把野という井水を跨ぐ拱橋、つまりアーチ橋という意味である。因みに、この六把野井水は1603年に本多忠勝により着工、現在も利用されている用水だ。アーチ橋は、コンクリートのブロックでアーチ下部をつくった珍しいもので、通常ねじりまんぽといわれるアーチの裏側から見るとひねりを入れた積み方をしている。煉瓦づくりや鉄筋コンクリートづくりのアーチ橋はしばしば見かけるが、ブロックを用いたものは珍しい。
この路線にはもう一つ、3連のアーチ橋めがね橋(明智川拱橋 大正6年)があり、これもまたブロックが使われている。万事スピード化の時代、最高時速40キロ台、かわいらしい軽便鉄道サイズ車両、北勢線に乗ると何故かほっとした気分になる。沿線には、アーチ橋のほか古い家並の残る町があり、一度は乗ってみたい鉄道だ。
(掲載号:2008年03月21日号)
