週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

鶴舞公園噴水塔

名古屋駅から地下鉄でそれほど離れていないところ、市街地と言っても良いだろう。鶴舞に公園があって、ここに明治43年に作られた噴水がある。

 元々、この年に「関西府県連合共進会」なる一大イベントがあり、その会場の呼び物として建設されたのが、高さ10メートルの巨大な噴水塔だった。明治建築家が設計した噴水塔は堂々たる姿をしており、トスカナ式の8本の円柱に支えられたローマの円形神殿のよう。この天辺に据えられた青銅製の大杯から水が八方に流れ落ちるのである。

 これだけ堂々とした西洋の古典様式に則った噴水は日本にはここだけではないだろうか。設計は近くの名古屋工業大学の前身に当たる名古屋高等工業学校の教授でかつ建築家、明治から戦前にかけて中京建築界のドンであった鈴木禎次の若き日の作品である。

 この噴水の本体のデザインはルネサンス様式で手堅く纏められており、観覧台などのデザインは整っている。

 しかし、周囲の欄干はなぜか日本の社寺の玉垣風、彫刻ではなくなにやら庭石のような巨石が噴水下の池にごろごろと置かれているのだ。まあ、この辺りは鈴木は納得しなかったと思うのだが、諸般の事情でこうなってしまったかもしれない。それも含めて明治末の西洋式モニュメントの実感を今に伝えている。

 博覧会終了後、会場は噴水と鈴木設計の奏楽堂を取り入れて、都市公園として整備された。公園設計は、日比谷公園を設計した本多静六が行った。

(掲載号:2009年02月20日号)