週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

市政記念館(旧高山町役場) : 岐阜県高山市

 岐阜県の北部、飛騨地方の中心都市が高山だ。この町へは名古屋から鉄道で2時間余り。今の季節は訪れる人も少なく、じっくりと町並みや歴史的な建築を見学することができる。

 奈良時代、税金の代わりにここでは大工が都に徴用され、江戸時代になると「飛騨の匠」は優秀な大工の代名詞として使われた。

 高山は飛騨の匠の町で、彼らが建てた町屋が並ぶ通りは、京都の町に通じる雅な雰囲気を漂わす。そんな中にひっそりと佇んでいるのが、旧高山町役場(現「市政記念館」明治28年竣工)だ。木造の2階建て、玄関の上にかけた懸魚と呼ばれる木彫りの彫刻、屋根に載せた大きな軒瓦、伝統的な和風建築のように見える。

 設計施工は八代目阪下甚吉。明治の高山を代表する大工棟梁だ。木の扱いの見事さは言うまでも無いが、最大の特徴は2階のガラス窓だ。今では小学校の校舎のようにガラス窓を横一列に並べるような建築はどこにでもあるが、明治20年代地方では、ガラス窓を使うこと自体が、画期的だった。阪下甚吉は、当事貴重なガラスを使って二階の議場の壁一面を窓にした。こんな、光あふれる空間を高山の人たちは始めて見ただろう。瓦屋根、建物の外側にめぐらされた鋳物の鉄柵、どれも高山には無く、飛騨の匠たちが西洋の建築を如何に取り入れていったかが分かる。渋いが味わいのある近代化遺産だ。

(掲載号:2006年12月29日号)