週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

名和昆虫博物館 : 岐阜県岐阜市

 夏まっ盛り。暑さをものともせず、大勢の人が「愛・地球博」に訪れている。万博訪問の基点となるのが名古屋駅だが、その名古屋駅から岐阜駅までは電車で30分程度。意外と近い。

 この岐阜市に「財団法人名和昆虫博物館」がある。正確には駅からタクシーで10分程度、岐阜公園の一隅に博物館はたたずんでいる。名和昆虫博物館の歴史は古く、ギフチョウの発見で有名な昆虫学者名和靖が明治29年に岐阜市内に開いた名和昆虫研究所を発祥とする。

 昆虫研究所は明治37年に岐阜公園に移転。現在、明治40年に竣工した「記念昆虫館」、大正8年竣工の「昆虫博物館」という小ぶりな2棟の建物からなる小さな博物館だ。しかし、展示自体はさすがに歴史と伝統を感じさせ、夏休みの子供向けに展示されているカブトムシをはじめとした多種類の昆虫の標本は芸術的とも言えるできばえだ。

 明治・大正時代に建てられた昆虫博物館。そして、これら2棟の建物はいずれも武田五一という高名な建築家が手がけているのだ。「記念昆虫館」は元々陳列館として建てられ、留学帰りの武田五一は、どこか欧州の街の一隅に有ってもおかしくない住宅風のデザインでまとめている。「昆虫博物館」はヨーロッパの流行様式ゼツェッシオンの影響を受けたモダンなデザイン。しかし、1階展示室は3本の太い木の丸柱が並ぶ。これは当時行われた唐招提寺の解体修理に伴って取り替えた柱を再利用したものだ。

(掲載号:2005年07月29日号)