週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
桃介橋 : 長野県木曾郡南木曾町
冷りとした朝、栗の木の下に沢山のイガが落ちている。この時期、栗ご飯なども良い。もう一つ思い出すのは、栗の菓子。これは岐阜県西部の地域、中央本線沿いの町々の名物、栗きんとんなどなかなか美味い。
中央本線は岐阜県内では木曽川の南をかなりの距離をおいて並行して走り、長野県との県境近くで交りほぼ並行して走るようになる。「桃介橋」はこの交差点のすぐ長野県側、南木曾町にある。南木曾は江戸時代の宿場町であり、その姿を今に残す「妻籠宿」が国の伝統的建造物群に指定されていたが、大正時代には、木曽川の水力電源の開発拠点だった場所である。ここには読書発電所(大正12年)、柿其水路橋など、当時最新の技術をつかった発電施設が現存している。桃介橋は、福沢諭吉の娘婿であり、当時、大同電力の社長として心血を注いで電源の開発に取り組んでいた福沢桃介が建設した。
この橋は他に見られない橋梁だった。コンクリートの塔やワイヤロープを使って吊る近代的な構造を持ちながら、人が渡る部分は木製でつくられているのである。この構造で全長247メートルの橋を架け渡した。昭和25年から町の人が使い始めたが、人が渡れないほど痛んでしまった。平成5年に復元、平成6年には国の重要文化財に指定され、今では、南木曽の観光の目玉ともなっている。桃介と明治の大女優河上貞奴とのロマンスは有名で、南木曽町の福沢桃介記念館に二人の写真が展示されている。
(掲載号:2003年10月24日号)
