週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
金沢くらしの博物館 : 石川県金沢市
歴史的な町並みと社寺仏閣、日本三大名園の兼六園。伝統工芸では輪島塗、九谷焼、加賀友禅と、金沢で加賀百万石の遺産を数え上げればきりが無い。しかし、金沢はまた、洋風建築の町でもある。
例えば兼六園の近くにある石川県立博物館。この建物は、旧陸軍の煉瓦造りの兵器庫(明治42-大正3年)を保存し、再活用した建物だ。また、少し歩けば、洋風建築を意識した尾山神社山門(明治8年)。この他にも、金沢の市街地には、実に多くの洋風建築が残されている。そして、ごく自然に歴史的な町並みと溶け合っているのだ。
「金沢くらしの博物館」は、そんなさりげない残し方をした洋風建築である。元の石川県立金沢第二中学校(明治32年竣工)を保存し、博物館として活用した。両端にとんがり帽子のような尖塔が付けられていて、中央のとがった破風(ベディメント)と合わせて、この建物は「三尖塔校舎」の愛称で親しまれてきた。
戦後も紫錦台中学の校舎として使われたが、取り壊そうと言う話が起こった。これに反対したのが、芸術院会員であり明治村の初代館長を勤めた建築家谷口吉郎。勿論、この学校の卒業生だった。校舎は、昭和53年に金沢市民俗文化財展示館としてオープン。平成19年に「金沢くらしの博物館」となった。博物館の展示物は市民からの寄贈品で成り立っていて、明治から高度経済成長期あたりまでの金沢の人々の暮らしが分かる。洒落た解説装置など殆ど無い素朴な、それだけに妙に懐かしい。兼六園から5、6分で行ける。
(掲載号:2008年06月20日号)
