週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

発電所美術館 : 富山県下新川郡入善町

 富山県入善町は、北アルプスを背後に控えた一面に水田の広がる農業の町だ。また、市街地を少し離れると平地からいきなり地盤がせり上がったような印象を与える河岸段丘、この地理の教科書で習った地形的な特徴がはっきりと風景として現れるのだ。「下山芸術の森発電所美術館」は、駅から車で10分ほど走った河岸段丘と平地との境にある。

 発電所美術館の名の通り、この美術館は水力発電所の建物を保存活用した施設だ。元は段丘の高低差23メートルを利用した北陸電力黒部第2発電で、大正14年に竣工した。

しかし昭和59年から始まった、黒部川用水路の改修工事により発電所は廃止。建物を町が譲り受け、全国でも珍しい発電所建物を利用した美術館として平成7年にオープンしたのである。

 旧発電所の発電機室を展示場に改修。なかなかユニークな改修方法で、3機あった発電機のうち1機を残し、また導水管や天井走行クレーン、屋根を支える鉄骨トラスなども残し、従来の美術館にはない発電所内部の雰囲気を残した展示室にした。

 この特異な空間に興味を持つ造形作家も多いという。使いようによっては白い壁や天井で囲まれた展示場には無い空間造形上の効果がここには生まれる。これが魅力となっている。下山芸術の森にはこの美術館を中心として、旧水量調整管理棟を利用したレストラン、新しい施設としてアトリエ、宿泊棟、展望台、ゲート棟などがある。機会あれば訪れていただきたい近代化遺産だ。

(掲載号:2007年08月31日号)