週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
旧交通博物館 : 東京都千代田区
東京の万世橋。日露戦争で軍神となった広瀬中佐と杉野兵曹長の銅像があった場所だ。ここには辰野金吾設計の煉瓦造りの堂々たる万世橋駅があった。この駅は関東大震災で焼失し、その跡に二代目の万世橋駅が建てられた。
旧交通博物館は昭和11年(1936)にこの二代目万世橋駅の跡に建設され、当時は鉄道博物館と呼ばれた。今年さいたま市にオープンした鉄道博物館は鉄道ファンに大人気だとか。交通博物館はこの移転のため閉鎖されたのだが、その跡を久々に訪れてみた。
子供の頃訪れた時に、如何にも手狭なのと、妙に近代的な姿をしていたのを覚えている。やはり、子供の頃の印象は今も変わらず、ただ最近読んだレポートから、狭さとモダンさの理由が明らかになった。何でも当時の鉄道博物館を設計したのは、鉄道省の土橋長俊という建築家。彼は近代建築の巨匠と呼ばれたル・コルビュジエに学び、コルビュジエ風というか当時最新のスタイルでデザインした。当時の日本では超モダンな建築だった。そして何か手狭な印象を受けたのは、この建物の基礎は万世橋駅の基礎をそのまま用いたからで、そのため設計に著しい制限を受けたようだ。
しかし、考えてみれば昭和初期から交通博物館があったというのは、その頃から鉄道マニアが居たからだろうか。それとも、今も昔も子供は乗り物を好むからだろうか。今は閉じられた、交通博物館。全く、私の中では戦後の建物だと思っていたのに、戦前からあったとは。そんな、レポートを久々に読んだ。
(掲載号:2007年12月07日号)
