週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

山口貯水池第一取水塔 : 埼玉県所沢市

 一般には狭山湖で知られているのが東京都水道局の山口貯水池だ。因みに近くの多摩湖は村山貯水池で、このふたつの人造湖で東京の飲み水を確保しようとした。大正2年に工事が始まり、昭和9年に工事が完成した。水道事業の完成というのは、浄水場の建設や導水管の敷設など様々な工事が絡む。(昭和11年に完全に工事が終わったという見方もある。)この工事は戦前における最大規模の水道事業であった。

 水道施設は大部分が地下にある。地上に見える施設は、配水塔、浄水場の上屋などごく限られたものだけだ。水面に姿を現す、取水塔はこの貯水池建設のシンボルであった。山口貯水池も村山貯水池もダムが建設され、それぞれに美しい形をした取水塔が建設されたが、山口貯水池は先に耐震補強を終え、再び水を湛えるようになった。湖面に丸い円筒の上にとんがり屋根を乗せた姿を現している。そしてこの塔に湖岸から白く塗られた軽快な鉄のつり橋が連絡しているのだ。塔の高さは湖底から35・2メートル。水面にはその3分の1くらいが出ているのだ。土木施設は見えない部分にも大きな意味がある。

 水面下には水を取り入れるための開口部がいくつか設けられていて、水は湖底さらに地下の導水管を通って外に出される。とんがり屋根の周囲にはバルブを開け閉めする装置があって人の手でハンドルを回した。緑あふれる湖岸、紺碧の水、そんな中に緑青色の屋根と褐色のスクラッチタイルを貼った取水塔が静かにたたずんでいる。

(掲載号:2008年01月04日・11日合併号)