週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
古河掛水倶楽部
少し前まで、滅多に入れないと思っていた施設が、一般に公開されていると聞き驚いた。栃木県足尾に残る掛水倶楽部である。この建物は、足尾銅山が活況を呈していた時代、明治末から大正初期にかけて、古河鉱業の迎賓館として建てられた施設だ。因みに大正中期から昭和初期の足尾はまさに全盛の時代で、この山の中に3万人以上の人が暮らした鉱山都市だった。
当時は、今とは比べものにならないほど交通の便が悪く、東京などから偉い人が訪れても泊まる場所や接待する場所が無かった。足尾銅山だけではなく、日本各地の鉱山や炭鉱では立派な施設を建設した。今も北海道の炭鉱跡、四国新浜の別子鉱山、三井三池炭鉱のあった大牟田市などには接待館が残っている。
掛水倶楽部は、こんな鉱山宿泊所の中でも最も豪華な建築だ。木造の洋風の建物だが、外側の装飾がいささか地味なので、ちょっと目にはそれほどの建物とは映らないかもしれない。しかし内部は豪華で、一見の価値はある。但し、見学は土日祭日に限り、申し込めば平日でも見学は可能のようだ。機会あれば是非訪れていただきたい近代化遺産だ。
近くには、高級社員の社宅跡や旧電話交換室の建物、煉瓦造の倉庫などがあり、一部は見学ができるようになっている。掛水倶楽部の周辺には活況を呈した時代の足尾の面影が残る。最近は地元も産業観光に力を入れ始め、観光坑道(足尾銅山観光)や様々な説明板の設置などをしている。
(掲載号:2008年07月18日号)
