週刊誌コラム
週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」
間藤水力発電所跡 : 栃木県日光市
日本初の水力発電は何処で行われたのか。栃木県の日光近くにある旧足尾銅山から始まったと言うのが定説だ。この足尾銅山では、間藤という場所に水力発電所を設置、明治23年12月に完成した。これが、わが国水力発電の起源といわれる。一方、やはり栃木県の麻の産地であった鹿沼には、旧下野麻紡織という麻紡織工場があり、この工場では明治23年8月水力発電の機械設置が完了した、とされる。間藤発電所の完成と、下野麻紡織の機械設置、いずれが先か鼻の差のような気がするが、いずれにしても栃木県が水力発電の発祥地と言うのは確かだ。よく知られている田辺朔郎が行った琵琶湖疎水の水力発電所の完成は明治27年で、足尾での発電はこれより3年も早い。
では、何故足尾銅山で水力発電が始められたのか。それはだんだん坑道が深くなると蒸気機関では限界に達したこと、そして火力発電にするには、周囲の森を伐採して燃料とせねばならず、これも難しい。結局、周囲に豊富にある谷川の水を利用して発電し、鉱山の水の汲み上げなどに利用することにした。発電機など一式を製作したのは、ドイツのシーメンス社であった。
現在、この水力発電所を偲ぶことができる遺産は、道路わきの崖に残る鉄製の導水管とその下の河原に残る煉瓦造りの発電所建物の基礎部分だけ。しかし、この二つの遺産が、この地で日本初の水力発電が行われたことを示す動かぬ証拠となっている。
(掲載号:2008年01月25日号)
