週刊誌コラム

週刊朝日「大いに成るほど〜近代化遺産編」

旧国立新屋倉庫 : 秋田県秋田市

 晩秋である。この時期、秋田地方では野山の色は褐色になり、家では新米飯をつぶして串に巻き「きりたんぽ」をつくる。秋田市は人口31万人、仙台市に次ぐ東北第二の県庁所在都市だ。

 秋田駅から羽越線で10分、雄物川を跨いですぐに新屋という場所がある。昭和10年、政府は米の価格調整のため国営の米蔵を新屋に建てた。米どころ秋田の米は、間口14・4メートル、奥行き45・2メートル、高さ11・1メートルの巨大な木造倉庫8棟の中に収められたのであった。この施設が今も残る。

 倉庫は平成2年に使用停止。一帯は「秋田公立美術工芸短期大学」として整備されることになったが、倉庫は取り壊さないで、大学の施設として利用された。大学は平成7年に開校。倉庫は大学の実習棟、市民向けの大学開放センター、製作工房、市立図書館分館に改造された。

 大学開放センターでは、市民向けアトリエや講堂、喫茶店などが設けられ、中で一休みすることができる。中に入れば、太い秋田杉の柱や梁が見え、鉄筋コンクリートなどで建てられた現代建築とは一味違った空間を作り出している。

 8棟の巨大な木造倉庫が整然と並ぶ様子は、迫力があるが、なぜか子供の頃、どこかで見たような懐かしさを感じさせる。
 殆ど知られていない近代化遺産だが、大学のキャンパスに取り込まれた旧国立新屋倉庫は近代化遺産の新しい活用方法を示してくれている。

(掲載号:2005年11月11日号)