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第三者意見

大成建設グループのCORPORATE REPORTは統合報告書の形となって4年目となるが、本年は昨年までのように本誌とDATA BOOKとを分けず、1冊にまとめたことで大分なものとなっている。本報告書は、現在の株主・投資家のみならず、将来の株主・投資家やその他のステイクホルダーに向けて、大成建設グループの経営活動を示す有益な報告書となっている。

早稲田大学 商学学術院商学部
教授 経営学博士
谷本 寛治
Kanji Tanimoto

谷本 寛治氏

持続可能な発展に貢献すること

ここ数年来課題となっていた事業計画・業務とCSRの取り組みとのつながりについて、明確にする努力がなされてきている。長期ビジョンと中期経営計画について、少しずつ具体的な中身が明示されるようになり、事業戦略がどのような方向性をもっているのか、CSR課題がどのように関連しているかがわかりやすく示されるようになってきた。

新中期経営計画がスタートし(2015-2017)、本年からはその柱となる8つの経営課題について、新社長の「トップコミットメント」の中で示されている(P7-10)。中長期的な事業環境の認識とそこでの基本方針を踏まえ(P13-14)、CSR課題とどうかかわるかを示している(P45-46)。

改めてCSR経営のポイントを振り返ると、次の2点にまとめられる。1.社会的に責任ある経営:マネジメントプロセスにCSRを組み込み、経営基盤を強めること。2.社会的課題への取り組み:持続可能な社会の発展に本業として、あるいはフィランソロピー活動として貢献すること。

大成建設においては、従来から経営の基本として2つの柱を置いており、建設業の社会的責任の遂行、高付加価値化に向けた事業構造の確立、として示されてきた。については、大成建設では年々その取り組みが丁寧に進められていると言える。「マテリアリティ・マトリックス」(P44)に示されているように、1)縦軸にステイクホルダーにとって重要な課題・目標を設定、2)横軸に経営計画においてESGを踏まえた経営課題を設定し、このマトリックスの中で重要課題を見いだそうとしている。主な項目についてKPIを定め、PDCAのサイクルを進める実施体制がここ数年で定着している。その際、ISO26000をベースに重要課題を考えていくことで、社内の理解を深めてきた。今後は国内外におけるステイクホルダーとのエンゲージメントを通して、CSRの重要課題を考えていくことも重要になってこよう。

についても、数年前から、本業である建設事業における技術・ノウハウをもって社会的課題の解決に貢献し、高い付加価値を生み出す事業構造にもっていくことを謳っている。「TAISEIVISION 2020の目指す姿」(P8)における「高付加価値型の事業構造」のイメージは、中期経営計画(2015年3月30日発表)において示されている。そこでは縦軸に市場成長性、横軸に収益性を置き、高付加価値の事業を定めていこうとしている。ただこれはまず、縦軸に社会的課題、横軸に同社の技術・ノウハウのマトリックスを定め、大成建設ならではの事業を位置づけ、その上で経営戦略上のプライオリティを考えるに当たって、市場成長性と収益性のマトリックスにおいて考えていくことが順番ではないだろうか。そう位置づけることで、TAISEI VISION 2020をベースに、本業を通して持続可能な社会の発展に貢献することの意味が分かりやすくなると思われる。

残された課題

大成建設グループは、これまで本社での方針を、グループ企業さらに協力企業に徹底させていくことに努力してきている。改めてそれぞれのレベルで生じうる理解の度合いや取り組みの格差が、リスクを生まないように注視していくことが肝要である。

まず本社内でのCSRマネジメントの実施とPDCAの管理が、慣れによって形式的にならないよう、常に経営基盤の強化とリスクマネジメントの両面から認識していくことが重要である。

グループ各社に対しては、本社の求めるCSR理解を深めていくこと、取り組み体制の拡大・定着を継続して進めていくことが求められる。さらに海外における、営業所・連絡所・現地法人における取り組みの推進は、今後の課題であろう。

CSR調達については、着実に取り組みが進んでいる。昨年来、引き続き協力企業である「倉友会」に対してモニター票の配布・回収を行い、取り組みの遅れている企業に対しては指導を行っているが、この地道な作業を継続して徹底していくことが重要である。

いずれにせよ、現場である各作業所やその管理部門において、CSRの諸課題から、コンプライアンス、リスク管理、情報セキュリティの問題等が徹底的に理解されること、さらに強い現場から新しい社会的課題解決の可能性を見いだしていくことも期待される。

またステイクホルダー・エンゲージメントについては、現状各部署が従来から取り組んでいるものを一覧表にまとめている(P78)。今後は、各事業プロセスの中でキーとなるステイクホルダーを位置づけ、問題発見・解決型のエンゲージメントを試みることも期待される。さらに先にも指摘したように、マテリアリティ策定に当たって、ステイクホルダーから具体的に意見を聞きフィードバックしていくといったことも期待される。

最後に、統合報告書としてはこれまで財務情報が少ないことが気がかりであった。ANNUAL REPORT(英文)において示されている財務情報と、本報告書におけるその情報の量・出し方のギャップは大きい。本意見書の冒頭に、本報告書は現在・将来の株主・投資家をはじめとするステイクホルダーに対して、大成建設の経営方針・活動全般に関して有益な情報を提供していると書いた。ただ次にそれらが財務情報とどうつながっていくのか、そしてそれを本報告書においてどう示していくのか、今後CSR、財務、経営企画等の担当部署において調整していくことが、一つの課題と思われる。

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